ある意味では読みやすい…のか? [読書]

誉田哲也の『ヒトリシズカ』。最近、ドラマ化された『ストロベリーナイト』の原作者の新刊。『ストロベリーナイト』はすこし面白かったので、読んでみました。が、正直、いまいちかなぁ…。

内容はとある事件を発端として、それぞれの章ごとに主人公(視点)を変えて渦中にいる少女を追跡する物語。ネタバレはしたくないので、詳細は省略するが、少女の行動の実現性や最終章にいたる少女の変化にすこし無理があるような気がする。ドラマの『ストロベリーナイト』を見ていても思っていたことだが、物語に説得力が欠けている。『ストロベリーナイト』に関しては、役者の演技力でその説得力をカバーしていたように思う。石黒賢や杉本哲太、武田鉄也がそうだ。(主人公役の竹内結子は力みすぎてて、いただけなかったが。)

小説において、その説得力を強化するのは、緻密な表現。この場合においては、特に巧みな心理描写が必要に思えるが、どうも心理描写、叙情表現が苦手なようで、叙情的表現の量があきらかに不足している。(代わりと言ってはなんだが、不要な説明的表現が散見されるのも残念なところ。必要な描写を増やし、不必要な描写を削るべき。『1Q84』の天吾が『空気さなぎ』を書きなおす作業のように。)少なくとも、最終章にいたる少女の心理的変遷は、物語の根幹であり、かなり丁寧で十分な量の描写が絶対的に必要にもかかわらず、それが存在しない。シナリオ上で想像はできるが、最終章の手前で、少女視点の章を設けても良かったのではないか。きっともっと深く心に残る作品になったことだろう。

そもそも、小説はただの日常を描いている訳ではないので、多少の無理が生じるのは当然のこと。それを表現力で補い感情移入させるのが小説家の腕の見せ所だということが良く分かる一冊。

 



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コメント 2

仁実

非日常を出来事ベースで積み上げるキャラ。

警察モノや青春モノはかなり面白いんですけど、
ヒトリシズカはちょっとキビシイ設定でしたかねぇ。
武士道シリーズで青春モノの作家さんなのか?、
と思ってたら、警察モノとかちょっとハードな作品を
だせると思ってたんですけど・・・。

極めて現実的、意外でもない古風な発想、
挫折してもまっすぐ進む性格、なにより職人!
誉田さんをこんな感じで評しているサイトがあって、
妙に納得。
http://www.birthday-energy.co.jp/

新作が6/5に発売予定だそうで、どんな世界観が
広がるのか、いまから楽しみですね~。

by 仁実 (2012-05-11 23:33) 

HanageDarake

仁実さん、コメントありがとうございます。
ブログを始めてから、初のコメントで、気付くのが遅くなりました。

やはりこの作品はちょっと無理がありますよね。
ただ、誉田作品はこれしか読んでないので、他の作品も一度読んでみようと思います。(武士道シリーズあたり。)

上記のサイトも拝見しました。
ありがとうございます!!
by HanageDarake (2012-05-16 22:55) 

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