『AMOK』 Atoms For Peace

 

 

 

 

待ちに待ったAtoms For Peaceの1stアルバム『AMOK』。聴いていると、汽車の力強さとリニアモーターカーの滑らかな疾走感を併せ持った列車に乗っているような感覚を憶える。ちなみに、トム・ヨークの『The Eraser』は徒歩って感じ。

一聴した感じでは、Radioheadに近いかと思ったけど、本質的には『The Eraser』の延長線上にある、もしくはヴァージョンアップといったところで、『The Eraser』と同じ遺伝子のアルバムではないかと思う。というのも、『AMOK』にはRadioheadのような感情的起伏がなく、逆に『The Eraser』のような独白的な雰囲気に満ちている。Radioheadは時に喧嘩腰でリスナーに語りかけるのに対し、『AMOK』、『The Eraser』の両者はリスナーを諭すかのよう。また、ジャケットのアートワークも『The Eraser』のそれとテーマがまんま同じで、ともにジャケットを開くと屏風絵のように一枚の絵になっていて、世界の終末を連想させるものとなっている。このことからも、トム・ヨーク、ナイジェル・ゴドリッチらが意図的に『AMOK』を『The Eraser』の後継的に位置付けていると推測される。インタビュー等を一切読んでないので、本人らがどう言ってるかは分からないけど(笑)。余談だけど、ロシアでの隕石騒ぎの直後に隕石の落下（と思われる）を描いたジャケットをリリースするというのも奇遇というか何というか…。

『The Eraser』と『AMOK』の全体的な雰囲気の相違点は、『The Eraser』では、トム・ヨークのボーカルがトラックを包み込むようであったのに対して、『AMOK』ではトラックにトム・ヨークの声が乗っているような感じ。冒頭に記述した感覚＝ドライブ感が全然違うかなと。この違いは、ライナーノーツの解説でも書かれているように、パーカッションの影響が大きいと思う。『The Eraser』と『AMOK』におけるトム・ヨークのボーカルに明確な違いはなく、サウンド面でのバージョンアップ、特にこのパーカッションが生む、坦々としつつも硬質なリズムは無視できない。案外、このパーカッションの源流はRadioheadの『In Rainbows』、中でも"15 Step"にあるのかもしれない。ギターにおいてもRadioheadっぽさが垣間見える。一聴した際のRadioheadっぽさはこの辺りにあるのだろう。

最後に、Atoms For Peaceというと、トム・ヨークとフリーが組んだサイドプロジェクトという印象が強いと思いますが（というか実際そうなんだが…）、いわゆるサイドプロジェクトにありがちな中途半端な実験的作品ではなく、Atoms For Peaceは十分に独立したグループとして成り立っていると言えるし、『AMOK』はそれを証明している作品だと言えます。むしろ、そんじょそこらのグループを凌駕しているとも思えます。そう言えば、最近、何となくKASABIANの『Velociraptor!』を聴いた際に、『AMOK』とのクオリティの差に驚いたなぁ。そもそも、比べるものでもないし、どこがどうとかってこともないんだけども、KASABIANの誰か（多分、トム・ミーガン）が「KASABIANはRadioheadを超えた」とかって趣旨の発言をした記憶があったので無意識に比較しちゃったんだろうか…。誤解のないように断っておきますが、僕、KASABIANも大好きですよ(笑)。

Atoms For Peace - Ingenue

Thom Yorke - The Eraser



Radiohead - 15 Step

アモック

• アーティスト:アトムス・フォー・ピース
• 出版社/メーカー: ホステス
• 発売日: 2013/02/20
• メディア: CD

タグ：Atoms For Peace amok

コメント 2

うんうん。いちいちうなづかせて頂きました！
踊りも進化してますね。ジャケットの津波にバンド名の放射能に日本人としてはキツイのですが、音楽の暗さに慣れると痛みに向き合える気がしてくるから不思議です。
by あゆこ (2013-03-23 11:26) 

あゆこさん、nice!&コメントありがとうございます！！

中にはジャケット見ただけでNGって方もいるかもしれませんね。
同じ媒体を介することで、向き合える人と逆に目を背ける人がいることは必然的なことで、あらゆる「表現」をする上での功罪と言えるかもしれません。
「表現」することの難しさであり、面白い部分ですね。
by HanageDarake (2013-03-24 17:49)